狼センセイと、内緒。

*始まり*


菜波side


今日から私は二年生。
今まで季節が変わるたびに気持ちが沈んでいた私だけど、昨日のセンセイとの出会いがあったから今年は気持ちが沈まない。

昨日のこと…夢じゃないよね…?

思い出しながら布団の中で何回も寝返りをする。


「はぁ…なんか改めると緊張するかも…」


そんなことを思っていた時、ガチャッと誰かが私の部屋に入ってくる音がした。


「菜波ー朝だぞー」

「お、お兄ちゃん!」


珍しくお兄ちゃんが私を起こしに来てくれた。
すごく眠たそうな顔をしている。


「ふあっ…今日は地球最後の日だぜ菜波…」

「はい…?」


完璧にお兄ちゃんは寝ぼけていた。




















--


「はぁ…」


いつもの通学路を歩く。
私の家は海の近くにあるから、通学路を歩く時は綺麗に海が見える。
そしてこっちから通学する生徒はまったくいないから1人の時間が心地いい。


「今日から新学期なんだよね…」


やっぱり憂鬱になっていた。
なぜかというと…
私は実は高校に入ってからイジメられていた。
元から人に話しかけるのはあまり得意じゃない私はクラスに馴染めなくて、ずっと勉強ばかりしていた。
その地味っぷりからか、最初はからかわれる程度だったけど、どんどんエスカレートしていって……
みんなに広まって、今に至る。


「学校なんて行っても楽しくないよ…」


そう思ったら、足が止まってしまった。

いっそのこと…海に身を投げ出しちゃおうかな…

そんなバカなことをふと思って、海へと足を伸ばす。
心の中で何度も死んだ方が楽になるよと、悪魔のような声が聴こえる。


「…冷たい」


足にまだ冷たい海がかかる。
だけど私は構わず足を進める。
死んだ方が楽になるよと、まだ頭の中に響く声。


「ごめんなさい…
お父さん、お母さん、お兄ちゃん…」


ゆっくりと足を進めて……
そしてお腹あたりまで海に入った時だった。


「旗手!!」


遠くから私を叫ぶ声が聞こえた。
振り返って見るとそこには…想像もしていない人が立っていた。


「神風…センセイ…」


センセイは焦ったような表情をしていた。

なんでここにいるの…?


「お前そんなとこで何してんだ阿呆!」


海に響き渡るセンセイの怒声。
突然私の中に差した光。
悪魔のような声もおさまった。

そうだよ…私何してるんだろう…

ふと我に返った。
だけど足は言うことを聞いてくれない。


「おい!旗手!」

「や…だ…」


私まだ死にたくない…!
センセイと今日からずっと一緒なのに…!
これからなのに!

だけど足は前へとどんどん進む。
そして身体が全部海へ沈んだ。

はぁ…
私死ぬんだ…
センセイ…

そう思っていたら意識がだんだん遠のいていった。






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