未来から来た花嫁 ～迷走する御曹司～

「そうなるとさ、その日は本当におめでたい日になるか、逆に葬式みたいな日になるかのどちらかだよね？ 今からドキドキするね！」


慶次が、またしても素っ頓狂な声でそう言った。意味がわからないし。


「それはどういう意味だ？」

「え？ だってそうでしょ？ その日がタイムリミットでさ、信之さんはその日までに結婚して跡継ぎを作らないと、僕らは全員無一文になるわけ。結婚はその日にするんだから確実にクリア出来るけど、跡継ぎの方は分からないよね？ その日までに小松ちゃん……じゃなかった小松さんのお腹の中に、赤ちゃんがいるかどうかなんてさ……」


なんだ、そんな事か。と一瞬思ったけれども……

こんな若い、人形みたいな子のお腹に赤ん坊？

全然イメージ出来ない。しかも、そうさせるのはこの俺なわけで……

小松とのあんな事やこんな事を想像し、思わずニヤケそうになったその時、俺の脳裏にある人物の顔が浮かび上がった。

それは、一度だけ遠目でチラッと見ただけにも拘らず、強烈に俺の記憶に張り付いたあの男、伊達政宗とかいう男の、眼帯をした細長い顔だった。