未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松が俺を好き?

政宗君はそう断言したが、それも違うと思う。残念ながら。俺は小松より14、いや15も上だし、好きなんて一度も言われた事がない。


ああ、そうか。政宗君は事情を知らないからそう思ったんだろうな。つまり、俺と小松が交わした“契約”を……


「なんで黙ってんだよ?」

「え? うん……」

「姉貴の気持ちに気付いたのか?」

「いや、それは……。悪いけど、それも君の思い違いだと思う。残念だが……」

「残念? あんた、今“残念”って言ったよね? あんたが残念って事か?」

「そうだけど?」

「そっか。やっぱりな」


そう言って、政宗君はニコッと笑った。なぜ急に笑ったのかはサッパリだが、何やら嬉しそうだ。その顔は、今までとはガラッと変わり、とても人懐こそうに見えるし、何より小松の笑顔に似ていた。


「あんた、いや信之さんはさ、姉貴とは契約だけの関係だと思ってるんだろ?」

「契約って……知ってたのか?」

「昨夜聞いたんだ。姉貴から。俺が信之さんとの事をシツコク聞くもんだから、とうとう諦めて話してくれた。それを聞いて俺は頭に来て、信之さんを殴りに来たんだ」


なるほど、そういう事か……

だが待てよ。だとしたら、変じゃないか?


「ところでさ、姉貴がどうして金を欲しがったか聞いてる?」

「いや、聞いてない」

「やっぱりそうか。じゃあ今から言うので、聞いてくれますか?」

「あ、はい。お願いします」


政宗君の言葉使いが急に丁寧になり、俺にまで伝染してしまった。それはさておき、話が若干逸れたような気がしないでもないが、小松が金を何に使ったのかは俺も気になっていたので、政宗君の話に耳を傾ける事にした。

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