未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「聞かれたんですか?」


今度は、さも興味津々といった顔つきで小松は俺に聞いてきた。いくぶん体を前に乗り出して。


「聞くって、何を?」

「それはもちろん、未来の話に決まってるじゃないですか……」

「ああ、そうか。それにしても君は、僕の話をすっかり信じたようだね? 奇想天外な話なのに……」

「そりゃあ信じますよ。だって、信之さまは嘘をつくようなお方じゃないし、現に菊子さんという方が消えるのを私は見ましたから」

「そう、だよね……」


確かにその通りだと思う。実は少しの違和感があったのだが、それは単なる思い過ごしだろう。

それはそうと菊子さんから聞いた未来の話だが、小松に全てを話すべきだろうか。全てと言っても、俺と菊子さんは結婚して、信吉という息子が生まれたらしい、という事ぐらいしか聞いてはいないのだが。


「それがね、聞かせてくれないんだよ。下手に僕が未来を知ると、その未来が変わってしまうから、とか言ってね……」


俺は小松に嘘を言ってしまった。たった今、俺は嘘をつかないと彼女から言ってもらったばかりなのに。

と言っても、未来を俺は知らない方が良い、というのは初めに菊子さんから言われた事だから、完全に嘘ではないと思う。しかし、なぜか菊子さんは俺と結婚した事を言い、息子が生まれた事まで言ったわけで、それらの事だけは聞いているのだが、小松には黙っていようと思ったのだ。

いや。思ったというよりも、言いたくなかった、というのが正直な気持ちだ。それがなぜなのかは、自分でも解らなかったのだが……

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