未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「何よ? あのお嬢さんじゃ不服なの?」

「そんな事はないんですが……」

「まさか、他に女性がいるの?」

「いませんよ、そんな人は……」


もちろんそんな女性はいない。いれば苦労はしない。だが……

なぜか自分でも分からないが、咄嗟にある女の子の顔が脳裏を過ぎった。それは、メイド服をまとった小松の顔だった。


「だったら、迷う事はないでしょ?」

「ですが、少し考えてみたいんです。一生の事ですから……」

「そんな事言ってもあなた、もうあまり時間がないのよ? 分かってる?」

「それは分かってます。そうですね……1週間だけ待ってもらえますか? それまでにはきっちりと結婚相手を決めますから」


俺は母達の顔を真っ直ぐに見て言った。他のことならいざ知らず、これだけは引くわけには行かない。


「いいわ。その代わり、1週間だけよ」

「はい、ありがとうございます」


俺が1週間という区切りをつけたのは、ヒロミが見つかるかどうか、1週間だけ待ってみたいと思ったからだ。今までの例だと、それまでには姿を表すはずだから。

もしこのままヒロミが現れなかったら、やはり菊子さんが未来から来たのは本当で、俺は運命に従い彼女と結婚しよう。

だが、もしヒロミがひょっこり姿を現したらどうしようか。うーん……

まあ、それはその時に考えるとしよう。

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