そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】

心配になりそう聞くと、陸さんが振り向き無言でフッと笑った。


その微笑みの意味が分からずキョトンと目を見開き彼を見つめるが、陸さんの口から答えが返ってくることはなかった。


――――チーン……


エレベーターの扉が開くのと当時に背筋を伸ばし上着のボタンを留めた陸さんが颯爽と歩き出し、私はまた慌てて彼の後ろをついて行く。


そして《第3販売部 部長室》とプレートが付いたドアの前で立ち止まった。


「ここだ。さっきも言ったが、部長が何を言っても取り乱すな。いいな?」

「……はい」


ドアをノックして部屋へ入ると、目の前の大きなデスクに座っていたのは、ユミちゃんより百倍色っぽい30代くらいの女性だった。


ムムムッ……?女……部長?まさか、ビックワールドの社長が言ってた陸さんと関係のあった親会社の女部長って……この人?


「あら?小林君じゃない。随分、お久しぶりね」


女部長のグロスで光る真っ赤な唇の口角が上がる。


「はい、ご無沙汰して申し訳御座いません」

「ふふふ……そろそろ来る頃だと思ってたわ。でも、女連れだとは思わなかったけど……」


うわぁ~凄い目で睨まれたー!どうやら私は招かれざる客のようだ。でも、ここで怯むワケにはいかない。


「初めまして!ビックワールドの小林鈴音、申年生まれの21歳です!今日は社長が行方不明の為、私が代わりに伺いました」


気合いを入れ大声で挨拶する私に女部長が「まぁ、かわいいお猿さんだこと」そう言って、バカにしたように鼻で笑ったんだ。


ムカムカムカ~!!申年をバカにしやがって、めっちゃムカつく女だ!!


ムッとする私を横目に、女部長が椅子にふんぞり返り偉そうに言う。


「あなたがあの駄作を考えたお嬢さんね?せっかく来てもらって申し訳ないけど、売れない商品は販売出来ないわ」


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