もっと甘く   ささやいて
私は帰りのタクシーの中で寝てしまった。

やはり疲れていた。

村田さんの肩に寄りかかってウトウトしていたのは覚えていた。

その後のことは熟睡中で記憶になかった。

翌朝起きたら、ちゃんと自分のベッドの中だった。

「う~んと、帰った覚えがないけれど?」

時計の針は朝九時を指していた。

電話が鳴った。

「はい、川村です。」

「おはよう、気分は?」

「村田さん、昨日はありがとうございました。」

「カギはドアポストへ入れておいたよ。」

「すみません、覚えてなくて。」

「君の寝顔はこれで二度目だ。三度目はもっとロマンチックでありたいな。」

「はっ?今なんておっしゃいました?」

「何でもない。それからデイビッドからメールで、君が帰ってからジュデェスがご機嫌斜めだと言ってきた。」

「私のせいですか?」

「なんでも週末に飛んで来るらしい。非公式だそうだ。私の所には顔を出さないと思うが、君の手に余るようなら、社に連れてきてもいいが?」

「よろしいのですか?」

「いいよ、構わない。」

「ありがとうございます。」

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