君のせい






は、はあ???



「私、なんも悪い事してませんけど!!!」




吉井の言葉に顔を上げてそう言うと、



吉井が私の頭に手を伸ばして、


ぽんぽんと優しく撫でてきた。




「さっ、さわるなっ!!!」



吉井の腕を掴んでどかそうしたんだけど、


力が強くて........





「お前が悪い」



耳に残る、低音の甘い声。





もう一度言い聞かせるように、頭を撫でながら言った吉井。


自分は背が高い女だと思っていたけど、


吉井の前に立っていると、


吉井に頭を撫でられていると、



すごく、自分が小さく感じた。



こんな気持ち、初めてだ...........








「道案内よろしく」



吉井は私の頭から手を離して、自転車のハンドルを持った。




しかたない、帰るか........




「こっち行って、あの信号を左」



しかたなく道を教えると、吉井は「わかった」と言って、

ゆっくりと自転車を引いて歩き出した。





ドキドキしたまま、くすぐったい気持ちのまま、

吉井の隣に行って、一緒に歩くと、



隣から顔を覗き込まれて、


ちらっと横目で吉井を見ると、

吉井が吹き出して笑って.........





その笑顔が、どれほど私の心を何発も打ち抜いてんのか、


お前わかってんのか!!


わかってやってんのか!!




吉井に振り回されっぱなしの自分がなんだか悔しくて、


下を向いて唇を噛みしめた。







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