呪いのブレスレット
「パートさんたちと居酒屋で暑気払いがあるのよ。言ってあったでしょう? 麻美とパパはもう食べたから。じゃあね。行ってきます」

ママはパンプスに足を入れながら早口で言うと出て行った。

玄関の鍵をかけてリビングに行くと、パパはソファに寝そべり、うつらうつらしている。

麻美はいなかった。

チャンネルをバラエティ番組に変えたとたんにパパが目を開ける。

「ん? 帰ったのか」

「うん。ただいま」

「ママは――」

パパが身体を起こし、大きなあくびをする。

「今出て行ったよ」

「そうか。私も部屋へ行くよ」

パパがリビングを出て行った。

なんとなく距離感がある会話。

年頃の娘を持つ父親としては少し照れがあるのかもしれない。

夕食の後、お風呂に入り、そろそろ寝ようかと思った時、玲奈のお兄さんを思い出した。

< 154 / 216 >

この作品をシェア

pagetop