Eternal Silence





自分の体をすり抜けるように、
ドアが迫ってくる感触は、
決して楽しいものじゃないが、
それよりも……閉じ込められた
病室から自由に動けたことが嬉しかった。




そして……俺の姿は、
誰にも見えない。




それはすれ違う奴らが、
俺と視線を合わせようとしないことから
推測された。








ドアからドアへ。




壁から壁へ。




通り抜ける瞬間の
衝撃は何とも言えないけど、
自由に病院内を散策出来たのは
楽しかった。








アイツの仕事ぶり、
見てやるか……。






そんな軽い気持ちで、
探検を始めた病院内に、
アイツの姿は居ない。






医局の扉をすり抜けて、
アイツがいつも座っているらしい
デスクの上に腰掛ける。





汚く散らかったデスクの上には、
分厚い専門書が広げられて、
ところどころ付箋が挟まれていた。










掴んで開いてみようにも、
俺の手は、
それを掴み取ることは出来なかった。







「嵩継は見つかったのか?」




白衣の一人が、
コーヒーカップを口元に運びながら
紡ぐ。




えっ?



嵩継は見つかったのかって、
アイツ……。
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