Eternal Silence

胸騒ぎの夜

本編「14.サヨナラも言わずに」を
読んでからお楽しみに頂けると幸いです。

千尋sideの短編です。


*  胸騒ぎの夜 *





その夜も……
僕はいつもと
変わらない日々を過ごしていた。


そんないつもと変わらない
当たり前の時間が……
ふとしたことで、
胸騒ぎの夜へと姿を変える。




書斎で、
アロマキャンドルを灯しながら
医学書に視線を走らせる。



そんな時間から僕自身が
我に返ったのは、深夜1時近く。


眠ろうと医学書を閉じて、
寝室へと向かったとき、
うちの病院に来る
救急車のサイレンの音が聞こえた。





そのまま寝室には向かわずに、
階下へと向かう。







「あれ?
 千尋も眠れないの?」





2階の勇人のフロアーに降りた頃、
勇人も寝室から姿を見せた。






「お父さん、
 また呼び出しかな?」

「どうだろう。

 なんか……勉強が終わらなくて。
 ちょっとコーヒータイム。

 千尋は?」

「僕も喉が乾いちゃって」




二人並んで、
リビングに顔を出した時には、
オンコールの呼び出しで、
飛び出していくお父さんの姿。






「「仕事ですか?」」

「あぁ。勇人、千尋。
 行ってくる。

 家のことは頼んだぞ」

「「はい」」






お父さんを見送って、
ダイニングに入ってからも、
何故か胸騒ぎが止まらずに
紅茶を飲みながら勇人と二人
過ごしてた。






嵩継さんの友人が入院した。




それを聞いた日から、
すぐ近くに自宅があるのに、
嵩継さんは病院に
居ることの方が多くなった。







再び、沈黙を
破るベルの音が鳴ったのは
お父さんが出掛けてから
一時間くらいたった後だった。


< 162 / 170 >

この作品をシェア

pagetop