Eternal Silence


ガチャリ。


少し重たい扉が音を立てて開くと、 
その部屋には、大きなピアノが存在を主張していて
そのピアノの奥。


勇人の存在が確認できた。



ドアが開いたのに気が付いたのか、
ピアノを弾く指先をとめて、
オレの方を向く。



「嵩継さん……」



見られたことに
対する戸惑いの様にもとれる
表情を浮かべて、
オレの名前を紡ぐ。



「悪かったな。
 部屋から灯りが漏れてたから
 開けてみた」



アイツは、
ピアノの鍵盤の上に布をかけて
蓋をゆっくりとしめると、
オレの方へと近づいて来た。


「好きなんですけどね。
 リズママのようには
 弾けないですね」


少し俯きながら、
告げる、勇人の表情が
いつもと違う気がして……。


もしや……
ピアノを弾いた時だけ、
素に戻れるのか?

コイツ?



「もう23時ですよ。
 嵩継さんはどうしたんですか?」

「あぁ、腹減ったからさ。
 夕飯に間に合うように起きる予定だったんけどな
 気が付きゃ、すっかりこんな時間だよ」

「ですね……。
 一応、夕飯の時に声はかけたんですよ。

 起きる気配は全くなかったですけど……」

「起きる気配なかったって、
 そういう時はだな、
 ツカツカっと中に入って来て、
 布団をひっぺがえすとか、
耳元でフライパン鳴らすとか」

「フライパンなんて
 持ち歩かないですよ」


オレにそうやって、切り替えした
アイツの返し方が、
アイツらしさのような気がして……
ちょっと嬉しくなった。
< 42 / 170 >

この作品をシェア

pagetop