悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~

「影宮の長の力を持ってすれば、
 時の君を目覚めさせることも可能かもしれませんね」



柊は自身にも言い聞かせるようにゆっくりと呟いた。



「もし俺に出来ることがあるなら
 もったいぶらずに教えてくれ」



少しでも解決策を手に入れたい焦りが
俺の声を荒げさせる。


「神威さま。

 徳力の長たる貴方が名実ともにご当主となり、
 影宮の長を継ぐ。

 ご神体、雷龍翁瑛を臣へと置くのです。
 カムナの試練を超えて」


そう告げた柊の言葉に俺は自身に纏わりつく
あの黒い影を想い浮かべた。


あの闇が……心地よく感じる時もある。
あの声に手を伸ばしたくなる。



ただ……今のままでは、
雷龍を臣に置くことは出来ない。



柊の言葉は、
今の中途半端な俺自身の力なさを
宣告するものだった。




「神威。

 過去、お前の身に何度も雷龍は降臨している。

 そしてその降臨を手助けしていたのが神威の父である、
 俺の兄貴が残した宵玻(しょうは)の護符。

 雷龍を臣に置いた時、
 契約と共に、一つの名で神龍を縛る。

 兄が名づけた名前は、宵玻。

 そしてこの護符に宿り続ける
 兄の力(りょく)に寄って
 今日まで、俺がこの護符を守り続けてきた。

 兄貴の想いを遂げるように。

 だが……護符の力は弱まっている。
 今がその時なのかも知れん。

 お前には、兄のような
 苦労はさせたくないと思っていたが……」




何時もはあまり語りたがらない
飛翔が珍しく昔話を聞かせて、
父より託された護符を俺の前に見せた。



「やるよ。
 今、それが俺が成すべきことなら。

 渋々やるわけじゃない。
 一族の犠牲になるわけじゃない。

 俺は俺自身の未来の為に
 雷龍を臣に置く。

 華月、暫く一族の事は頼んだ」




そう。


全ては俺自身の為に。






この気に入らない現実(いま)を
少しでも明るい未来(せかい)へ。




俺は奥宮の広間を後にした。



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