悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~

その後、
ゆっくりと墓参りを済ませた俺は、
九年前、左手に出来た
小さな龍の刻印を見つめる。




あの日以来……
その左手から、
迸る力を感じることは殆どない。



ただ……時折、
体の生気を全て吸い取られたように
意識を失って倒れた日が何度かあった。


それがこの刻印によるものなのかどうかは、
今の俺には、
断言することは出来なかった。




そんな背中を、
ゆっくりと追いかけながら
今日までの九年を振り返る。






父兄参観日に現れた飛翔。

運動会にも、
華月と二人、姿を見せた飛翔。


そして……
華月と飛翔のすぐ後ろには、
飛翔の義父母も姿を見せる。





幼心に憧れた
得ることのない時間に触れた七年。





金色の雨が告げた未来は、
今もゆっくりと回っていく。






そして……
その続く先の未来には、
新たな暗雲が
立ち込めようとしてるなんて、
此処の時の俺には、
まだ知る由もなかった。




だけどその刻印は、
今も俺の左手に刻まれたままだった。




そして……
その刻印を飛翔もまた
刻まれた存在。





「飛翔……
 左手のあの刻印
 どうなった?」

「さぁな。

 気にしたこともない。

 静かなもんだ」







飛翔はそう切り返しながら、
ゆっくりと俺の前を歩き始めた。


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