悠久幻夢嵐(2)-朱鷺の章-Stay in the Rain~流れゆく日々~




「和鬼、力を貸して」



咲はそうやって呟くと、
首元に飾る勾玉にゆっくりと手を翳した。


勾玉から放たれた光は、
やがて咲の体から一つの剣を生み出す。


体内から出た剣の柄を手にして、
和鬼はゆっくりと抜き出した。


その光景は、何処か先ほど俺がした
宝剣の顕現か力に
どこか似ているように思った。




「不思議ですか?
 影宮」

「まぁな」

「この力は鬼の世で守られ続けた力。
 鬼の世とはこの世界の裏側に常に位置する世界。

 和鬼、見せて差し上げてください。
 その方のを巣食う、闇の本質を」




咲が紡ぐと、和鬼はその鬼狩の剣と呼ばれるその刀を
ゆっくりと俺の方へと突き出した。


寸でのところで止められたその剣に映し出されるのは、
幼子の涼夜が、必死にもがき続ける様子。



『あっちに行けよ』

『ボクを傷つけるな』

『黒いものなんて大嫌いだ』





カムナの魔の手から必死に自我を防衛しようとしている
存在が姿を見せる。




コイツも一緒かよ。





刀を通して映し出されるのは、
涼夜の過去。






生まれた時から実の両親と交わることなく
宮家から影宮の元に差し出される
生贄としての生活を強いられ続けた涼夜。



涼夜の傍に居たのは
倉智ただ一人。



倉智以外の者と交わることなく
幼少期を過ごし続けた涼夜の前に、
突然、姿を見せたのは兄。


司宮竜也。



倉智に隠れて兄・竜也の手を取って
一人住まいから逃げ出すように
外の世界を感じた涼夜。




外の世界は涼夜が焦がれたように
明るいものではなかった。




涼夜の姿を見た途端に、
顔色を変えて行く大人たち。



実の両親ですら、
涼夜を受け入れることはなかった。




そのままその世界からも
逃げ出すように幼い涼夜は
自分の住まいへと逃げ帰っていく。





それ以来、司宮との交わりもたち
常に表舞台で華やかに活躍を続ける
司宮の映像を一人、追いかけるように辿り続けていた。



アイツが抱いた傷は、
俺も何処かに抱いてた傷。



飛翔と出逢うまで、どうしようもないほどに
持て余し続けてた想い。



押しつぶされそうなその心を必死に支えようと
守り続けるのが目の前にいる幼い少年の姿をした涼夜。 


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