悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

5.劣等感 -神威-



柊と共に始めた週末の修行。
平日は海神校で寮生活を行い、土曜日の午後から飛翔の迎えで赴く山桜桃村。

修行の始まりは、禊の儀式。

一番最初に教えて貰った所作に乗っ取って、
桜瑛と二人、自分自身を清めていく。

清めていくといっても、何処をどう清められているのかすら実感が出来ない現実。


だけどどれだけ同じように修行をして実感が得られていないボクと違って、
桜瑛は修行の成果が目に見えて現れていく。



そう先日の修行の最中、桜瑛は焔龍召喚の詠唱呪文を修行中に術が発動した。

指先から迸った一瞬の炎。
そして……天から降り立った、炎が一筋アイツの体内へと吸い込まれていくのを見た。

その直後、崩れるようにぶっ倒れた桜瑛は
そのまま神前へと運ばれて、一晩の入院の後退院となった。



倒れた桜瑛を気遣う心と、同じように修行を始めながら
何の手ごたえも感じられないボク自身の不甲斐なさに劣等感を覚える。



その日、修業が中断してボクは久しぶりに総本家の邸へと帰った。


飛翔の運転する車が邸前に到着すると同時に、
万葉が奥から姿を見せる。


そして万葉の隣に立つのは、徳力華暁【とくりき かきょう】。
現、【桜】を担う存在。


華暁は、闇寿と華月の娘。
そして桜瑛にとっての大親友。


*

大人しく寮に居ればいいものの、
帰ってきたのかよ、アイツも。

*


心の中毒づきながら、飛翔の車を降りる。


「お帰りなさいませ、ご当主。
 そして飛翔さま」


万葉が頭を下げて、いつものように迎えいれようとするなか、
ボクが車から降りると同時に、近づいてきてボクの頬を平手打ちする華暁。

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