悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

6.友と過ごす仕事の後 -飛翔-



神威を海神の寮に送り届けると、
いつものように鷹宮へと直行する。

週末、病院を抜けている遅れを取り戻すように
溜まっている仕事を追いかけていく。


月曜。

その日も気が付けば、朝日が昇り
日勤スタッフが顔を出し、当直スタッフが大欠伸をしながら
肩を解し、首を回し、大きく伸びをする。



「おはよう。飛翔、昨日も泊まりですか?」



出勤して早々、俺のデスクに近づいてくるのは由貴。



「まぁな。
 週末、好き勝手遊ばして貰ってるんだ。
 研修も遅れてる。

 時間見つけて追いかけないとな」


そう言いながら、PC上に表示された電子カルテを追いかける。


指導医と一緒に診察に携わっている患者の状況を追いかけるように
視線を動かしていく。



「おはよう、飛翔・由貴。

 もう、多い時は多いんだねー。急患。
 土曜は千尋が顔出してたんだけど、昨日は僕がERの見学行ってたんだよね。

 土曜は少なかったって千尋言ってたのに、昨日は次から次ら救急車来て
 オンコール組も呼び出し。
 
 手伝いたいけど僕も殆ど動けなくて、怒鳴られっぱなしだったよ」


そんな弱音的な言葉を吐きながら姿を見せたのは勇。


まだ午前の外来前だと言うのに、すでに勇は疲れ果てたように
自分のデスクの椅子に座り込む。



「おいっ、早城。
 引き継ぎ前に病棟まわるぞ」


何時の間にか医局に姿を見せた嵩継さんの声に
返事をして立ち上がると、順番に嵩継さんは病棟患者さんの部屋を訪ねていく。



「おっ、川本のおばあちゃん、今日は顔色いいねー。
 ちょっと診察させて貰うよ」


一人一人、患者の顔を見ては次から次へと親しげに声をかけて
診察していく。



「ほらっ、早城。
 お前ももっと、笑えって。
 能面になってんぞっ、表情。

 悪いな、喜田のおじいちゃん。
 ちょっと、コイツにガツンと説教かましてくれよ」


いやいやっ、マテって。
なんで俺が説教されなきゃいかない。
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