悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

ボクは敷布団のシーツを布団の中でギュっと握りしめながら、
渦巻く感情に翻弄されて、勢いに任せて言葉を発する。




「華月、当主が命じる。
 アイツをこの場所から追い出せ。

 一族を捨てて、父さんを捨てて出ていった奴など
 顔も見たくない」



初めて湧き上がる、憎しみにも似た怒りの感情。



記憶が混乱してる……。


儀式に望む前、康清たちに告げられた言葉は
最低の男。



飛翔……
アイツは父さんを裏切った存在。



だけどそんな裏切り者と、
後見を務める華月は親しいように映る。




今、ボクは誰をこの場所で信頼すればいい?



当主として、務めを果たすことすら出来ないでいる
この身で……。





「神威、お前がどう思おうが俺には構わん。
 だが、今のお前の保証人が俺であることはどうにもならん。

 俺は兄貴から、お前を託された。

 ここに兄貴が俺に残した、
 一族の宝、雷龍翁瑛【らいりゅうおうえい】の札がある。
 
 明日、転院の際に顔を出す」




冷めたような口調で、飛翔はボクに告げると
その足で病室から出ていってしまう。


そんな飛翔の後を一礼して慌てて追いかけていく華月。




面白くないボクは、体をベッドの上で起こすと枕を掴み取って
勢いに任せて壁側へと枕を投げつけた。



少し驚いたような表情を見せながら、
床に落ちた枕を拾い上げると、万葉はボクのベッドサイドに近づいてくる。




その表情は、何故か嬉しそうに微笑んでいる。



「万葉、言いたいことがあるなら言え。
 許す」


取り乱した現場を見られた照れ隠しもあって、
万葉に告げると、枕をボクの膝の上に置きながら
ベッドサイドの椅子に腰掛けた。



「神威さまがご当主に就任して以来、
 初めて、等身大のアナタを垣間見た気がしました。

 それが私には凄く嬉しかったのですよ。
 華月さまと、兄といつも危惧しておりました。

 だけど……飛翔さまは、あんなにも簡単に私たちが
 開けないご当主の心を開けてしまわれるのですね」
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