悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence





『えぇ、こちら現場の高野です。

 私たちが一報を受けて取材に入った時には、
 まだ集落が孤立することはなかったのですが、
 昨日の昼間、街へと続く唯一の道路が土砂崩れによって寸断されました。

 大雪の被害にあった人たちは、
 現在、村の唯一の集会場となる会所で避難生活を送っています』

『高野さん、澤野です。
 現地の皆さんは、今回の被害について何かいってらっしゃいますか?』

『村の人たちは皆、口を開くと神様の罰が当たったのだと
 口にしながら、俯いていらっしゃいます』

『神様……ですか……。
 なんだか異様な空気も感じますね。

 その場所は土地柄、過去も何度も大雪に見舞われることがあったのでしょうか?』

『えぇ、それに付きましてはこの村の村長さんに意見を伺いましたら、
 ここまで酷い雪は初めてだと言うことでした』







今も続くキャスターとリポーターの電話越しのやりとり。


TVの画面を見つめながら、
俺は映し出される、斎市【いつきし】と、
徳力の故郷である安倍村【あべむら】のことを思い出していた。



「はいっ、飛翔」


そう言って養母によって、
テーブルに並べられた朝ご飯。


体を気遣う養母が作る朝食は
完全な和食。


お漬物・味のり・お味噌汁・おひたし・焼き魚・卵焼きっと
丁寧に彩られた食事が目前に広がる。



「いただきます」


声に出して、箸を進めながら
そのTVを見つめ続ける。



「あらっ、凄い被害ね。

 斎市……。

 徳力の総本家がある安倍村も
 今は市町村合併で斎市になったのよね」


養母のその言葉に焦りを覚える。



あの場所が昔、俺が家族と住んできた村。


父も母も、
村人の為に命を落とした。




俺が生まれた生家は、凄く特殊な一族であり村だ。

徳力家系の長となる一族当主。

その当主を受け継ぎし存在は、
代々、その村人たちの生神【いきがみ】様として崇められる。

当主は、その代り……村に何か悪事が起きた時
神の怒りを鎮めるための生贄・人柱として海へと還される。

 
見返りのある特別扱い。
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