悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence

9.雨の記憶~ 前編 ~ -神威-


三月上旬、ボクは鷹宮総合病院を退院して
そのまま連れられた場所は、飛翔が父さんによって渡されたと言う
マンション。



山辺に住む被災者の村人たちが、一斉に住むそのマンションへと
ボクは連れられた。



無言でボクにお辞儀をする村人たち。




だけどそんな無言のお辞儀が、今のボクにはストレスを与えていく。







当主としての役割すら果たせない未熟者。







そんな風に責められているようにすら感じられて。




逃げるようにエレベーターに乗り込むと、
ボクは飛翔と共に最上階へと上がった。



最上階でゆっくりとエレベーターが止まり、ドアが開くと、
エレベーターの前で見知らぬ二人が深々とお辞儀をして膝を折っていた。




「父さん、母さん。
 膝を折るなんて止めてくれ。

 神威は当主じゃない。

 ただの神威だ」



飛翔が告げるその言葉が、
ボクのプライドを深く傷つけていく。



「飛翔、控えろ。
 ボクが当主だ。

 お前が徳力に戻ってきたのであれば、
 僕に従うのが筋であろう。

 そこに控えているお前たちは、何者だ?

 なぜ、ここに出入りすることを許可されている」



エレベーターから一歩出て、言い放つボクに
飛翔は無言で視線を飛ばしてくる。


いつもの仕返しのつもりか?



「ご挨拶が送れました。

 先代当主の命により、
 今日まで、飛翔さまを養子として迎え育てて参りました。

 一族末端の早城と申します」

「早城。

 先代当主とは、父のことだと思うが
 ボクはそのようなこと、一切知らぬ。

 このものが父の札を持ち、ボクと同格の地位を得ているらしいが
 当主としてボクは認めぬ。

 それだけは覚えておくと良い。

 出迎え御苦労、下がれ」



それだけ告げて、ボクはマンションの最上階の扉を開けて中に入ると
アイツを拒絶するように、内側からドアの鍵をかけてチェーンで侵入を拒む。



暫く飛翔は、俺の名を叫んでいたが
それもすぐに消えた。
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