悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



悧羅の卒業生……。


そう返答されてしまえばそれまでなのだが、
それでも、心は面白くない。




雷龍の札・神前の卒業生。


それだけのステータスがあり、
父さんの血の繋がった弟であるなら、
ボクの地位は簡単に脅かされてしまう。




「ガキ、ほらよっ。
 昂燿校についたぞ。

 お出迎えだろ」


そう言ってアイツが視線を向けた方向には、
ボクのデューティーが、メイトロンと一緒に姿を見せる。



そしてその隣に居るのは、昂燿校の生徒やら誰でも知ってる
伝説の最高総と言われる、伊舎堂裕さん。




「お帰りなさい。神威、大変な出来事でしたね」



そう言ってボクを温かく迎えてくれるデューティー。




「飛翔、見送りお疲れ様。
 帰り道も安全運転で」


伝説の最高総に声をかけられたアイツは、
ゆっくりと会釈して、ボクの荷物をメイトロンに手渡すと
運転席に戻って、車を走らせていく。




その日から二週間。


ボクはただ小学生としての時間を楽しんだ。
終業式が行われる日まで。




だけどその夜から、ボクは何度も何度も夢に魘されて
眠ることが出来なくなってしまう。



雨が沢山降りだした日、
誰かが母さんを迎えに来る。



真っ白な装束に身を包んだ母さんが、
ボクをギュッと抱きしめた後、ボクを父さん預けて真っ暗な外へと出かけていく。



母さんが外に出た途端、
ソーリャーっと声が聞こえて、何かの音色と共に遠ざかっていく。



その声を聞きながら、
父さんは声を震わせて泣きながらボクを抱きしめた。




母さんが荒波の中に助けを求めながら沈んでいく。




そんな夢を見ては、ボクは叫ぶように声を出して覚醒し続ける。
その度に、ポーン寮で一緒に眠るルームメイトを巻き込んでしまう。



こんな夢なんて、見た事なかったのに……。


どうして? 


< 47 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop