悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence




「兄貴のもとで一緒に暮らしたのは四年間。
 っと言っても、その当時の俺は悧羅の寮生だったけどな。
 それで八歳の時、兄貴によって早城に養子に出された」


「そして……中学の時に、
 貴方は私と出会った」



その時を懐かしむように
柔らかく微笑んで告げた由貴。


「あぁ」

「でも飛翔。
 確か……今、ご当主は神威君でしたよね。

 もしや……お兄さんは……」




言いにくそうに告げる由貴に、
一度だけ、静かに目を伏せて頷いた。




「兄貴がその務めを果たして 亡くなったことを
 風の噂で知ったのは二十歳の時だった」



だが理由も告げられず早城へと養子に出された俺は
反発して葬式にも出なかった。



「馬鹿だよな。

 ガキだった俺は兄貴に守られたことすら
 気が付けずに逆恨みして」
 


無意識に唇を噛みしめる。




「……飛翔……」





そのアルバムをゆっくりとめくって、
つい最近、真実を知った手紙が入った
封筒をゆっくりと前に差し出す。




由貴は、俺が見守る中、ゆっくりと封筒を手に取って
中から便箋を取り出すとゆっくりと視線を走らせた。



洗いざらい……吐き出した疲労感は
吐き気を伴いながらじんわりと押し寄せてくる。




その雨は……傷口に深く染み込んで……。


早城の家族では感じることのできない『痛み』が、
家族の絆を告げるようで。



俺に……厳しく優しかった。

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