悠久幻夢嵐(1)-雷の章-a rainy insilence



研修に向かいながらも、飛翔のことばかりが気になって集中出来ず
何とか1日を終えて、飛翔の病室へと顔を出したときには、
症状が回復したのか、まだ本調子とは言えないなりに、落ち着いたらしい飛翔が
目を覚ましていた。




「すいません。嵩継さん」


ベッドに横になったまま、嵩継さんに謝罪する飛翔。


「おっ、氷室も来たか。
 早城、目覚ましたぞ」

そう言いながら、私を部屋の中に招き入れる。



「重度の脱水、体中に出来ている内出血の後」



嵩継さんの言葉に驚きを隠せないまま、
掛布団をめくって飛翔の服をめくる。


視界に映るのは、どす黒いような青あざが
何か所も浮き上がっていた。



「すいません、警察には?」

「連絡してないよ。
 時雨って奴も、刑事の癖に表沙汰にしないために
 わざわざ運び込んできたんだろ。うちまで」

「すいません。
 内出血……なってたんですね。

 総本家に入った途端、体中が重くて圧迫されるような感覚に襲われて
 意識持ってかれたんですよ。

 次に目を覚ました場所は、蒸し暑い洞窟の中の座敷牢で」



サラリと告げる飛翔の言葉に、
絶句せずにはいられない。


「おいおいっ、早城。
 座敷牢って、時代劇かよ。

 けど……お前、今回も相当やべぇーめにあってんだろ」



相当ヤバい。


嵩継さんの言葉がずっしりと心に重くのしかかる。


私が飛翔をたきつけたから……。
飛翔は危険な目にあってしまったかもしれない。



そう思ったら、体が無意識に震えはじめてしまう。




ふいに医療用のPHSがなって、
嵩継さんが慌てて病室から飛び出していく。



「飛翔……私が……」


その場で座り込みながら、小さく告げると
飛翔は「由貴」と私の名を紡ぐ。




その目は、優しくて【お前のせいじゃない】と
語っているようで。
 

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