Wednesday ☂
STORY 1.


「あの、安達いる?」

「…あー、…たぶん職員室。
由紀が来たって言っておこっか?」
「そっか、…いや、いいよ!さんきゅ!」


優しい声が廊下の雑音と混ざり合い、
柑橘の香りが彼の代わりに教室に残された。


「…これでいいの?」
「そんな目で見ないで「は?」

真っ黒のアイラインを綺麗に跳ねさせた
華凛が溜め息をつく。


「ねぇ、沙綾。
いつまでそうやって逃げるつもり?
いい加減、見てて腹立つよ。」

「…そ、れは…自分でも反省してて…」
「あーあ、かわいそうな由紀ちゃん。
こんなヘタレなチビっ子に振り回されて。」
「ッだって…だって…よく分かんないし…」

「そうだそーだ!
由紀のことなんかどうでもいいんだ〜」

自然と大きくなる声に負けない声が乱入してきた。


あからさまに迷惑そうな顔をする華凛を無視して、
声の正体の有村くんはお得意のスマイル。

「そろそろうちの由紀も、
避けられてんの気付いてるよ〜?」

「ていうかまず、秋斗〔しゅうと〕さん。入って来ないでくれます?」
「華凛さんったら今日もどきつい。俺のM心がくすぐられます。」

「うわ、目も合わせたくないキモさ。」


会話を進める2人についていけず、
ひたすらと眺めるだけの私。



わかってる、けど。


由紀ちゃんとの今の関係が、壊れてしまう気がして…


どんな風に変わるのか分からないのが
怖くて堪らないよ…
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