マーメイドの恋[完結]

そんなある日、駅でマーメイドをみかけたのだ。
その日、倉沢は仕事が休みで、家の用事を済ませて帰る途中だった。


マーメイドは、泣きながら駅の階段を下りて、そのまま歩道を歩いていた。
駅からマーメイドの家までは、歩いて帰れる距離ではない。


しかも泣いているので、とても気になり、倉沢は車のクラクションを鳴らした。
マーメイドは一瞬振り向いたが、自分を呼び止めたのではないと思ったようで、また歩き出した。
無理もない。
マーメイドが、倉沢のことを知っているはずがないのだ。


倉沢は、車から降りてマーメイドに駆け寄り声をかけた。
南木海岸の名前を出したが、マーメイドは警戒しているようだったので、怪しい者ではないことを伝え、自分も南木海岸を走ったりしている旨を言った。


忙しいのかと尋ねると、家に帰るだけだとマーメイドは答えた。


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