マーメイドの恋[完結]

「夏子乗って」


夏子は抵抗する気力も残っていなかった。


「やっぱり俺の思ってた通り、夏子は戻ってきてくれたんやねぇ」


伊原は、本当にそんなことを思っていたのだろうか。
にわかに信じ難いが、もし本当なら相当の自信家かバカのどっちかだと、夏子は心の中で毒づいた。


しかし、本当のバカは自分なのだということもよくわかっていた。
ほどなくして、車はある建物の駐車場に入った。


ーここはー


福岡市内の高層マンションの駐車場だ。
最上階は億ションだといわれている。


「着いたよ。最上階じゃないけん、期待はせんとってね」


最上階じゃなくても、かなりの金額のはずだ。
このマンションも買ったということなのだろうか。


「入って」


見せたいものとは、この部屋のことなのだろうか。
まさか……。


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