今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。
 俺は航太の彼女を探した。

 こっちを遠巻きに眺めていた生徒達がそれぞれに散っていく。


 その中で1人動かない女子がいた。

 彼女だ。西野沙弥佳(にしのさやか)。

 陽菜が言った通りの美人。


 吹部のアイドルとかって聞いたことがある。

 定演で唯一、ソロ曲を持っているサックス奏者だと陽菜が自慢していたっけ。
 その音色の素晴らしさに感動したって、興奮気味に話してくれたことを思い出した。



「航太から伝言、頼まれたんだけど」

 声の主を確かめるような瞳で、俺を見たのはほんの一瞬。
 すぐに視線は陽菜達が出て行った校門に向いた。


「で、何?」

「航太が今日は陽菜と帰るから、ごめんって」


「今頃? それをあんたが伝えに来たわけ?」

 今頃、と問われて何も言えない。



 すでに2人の姿は見えなくなっていた。
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