遅咲きプリンセス。
けれど、それから間もなくして、社内には、こんな話が囁かれることとなったのだ。
『営業二課のエースだった藤原大貴。あの人、地方の関連会社に飛ばされちゃったんだって。まあ、女遊びも激しかったし、ちょ~っとオイタが過ぎちゃったのかなぁ~』
その話を偶然、トイレの個室の中で聞くこととなった私は、ほっと胸をなで下ろした反面、本当にあのとき菅野君が戻ってきてくれて助かった……と、心の底から彼に感謝した。
それにしても、藤原さんって……。
『女遊びが激しい』とのことで、その実、かなりのモテ男だったのだろうとは思うけれど、なんだかとっても、アレな人だ。
今度の職場では、あまりオイタが過ぎないように、ぜひぜひ注意して頂きたいものである。
その後、様子を見に足を運んでくださった諸見里さんと、グロスの付け心地や色合いなどの話をすることになったのだけれど、報告も上げ終え、世間話になったとき、彼に聞かれたのだ。
「グロスを付けてて何か変化はあった?」と。
「なんだか、キスを迫られました」
正直に答えると、なぜか彼は満足げに頷き、すぐに「そろそろなくなる頃だろうから、次はこれね」と新たな試作品を置いて帰っていった。
えー。
まだやるんですか……。