きみは金色
…気づいたことがあった。
あのピンと伸びた背筋には、裕也の髪よりもよっぽど、眠気覚ましの効果がある。
見ていたら自然と、自分の姿勢も直してしまうから。
ちゃんと正してみると、けっこうしんどいもんなんだよな。
背中や腰がだるくて、自分がいつもどれだけ筋肉をまともに使っていないのか、わかる気がした。
音楽室で、少しの時間を一緒に過ごした。
あの放課後から、もう2日が経つ。
『伴奏、イワコウに頼まれたの』
『うん、弾いてみないかって、言われて』
あの日。市ノ瀬と、はじめて会話らしい会話をした。
おれが繰り出す質問に、市ノ瀬はひとつずつ、ていねいに答えてくれた。
『ピアノ、いつから習ってんの』
『小学生のときからだよ』
『小学生からやってれば、そんな上手くなるもんなの』
『わたしより上手い人は、沢山いるよ』