久しぶりだね初対面
第一章
誰もが期待と不安を胸のうちに秘める新生活の幕開け。

俺は「久我時生(くがときお)」と名前の貼られた下駄箱の中から自分の上履きを取り出した。

…うちの学校は可もなく不可もなくの県立高校だ。

普通レベルの連中が、「とりあえず高校くらいは出とかないと」みたいな感覚で入学してくる。

かくいう俺もその一人で、中学三年の後半、あまりの緊張感のなさに危機感を覚えた両親や担任の教師がせっつくような形で、やっと決めた進学先がこの学校だった。

だから俺には、冒頭のような期待と不安もない。

中学の時と同じ、平々凡々な今までどおりの日常だ。

…同じ中学出身の連中と登校途中で落ち合い、適当に会話を交わしながら、そいつらとは教室が違うので、じゃあな、と手を振って別れ、自分の教室へと向かう。

鞄を机の横に引っ掛けて、自分の席へ。

今日もいつもと変わらない、日常が始まる…はずだった。


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