キスをしない男
キスをしない男


「あぁ……あン……キス……して……」


ベッドの最中、俺の首に腕を回し、吐息混じりに唇を求める女。

今日の女もか。全く、女ってのはそんなにキスが大事か?

俺はまぎらわせる様に、首筋に顔を埋めると、唇を滑らせた。


「言っただろ?俺はキスをしないって」

「まさか、本気だとは思わないじゃない?」

そう言われたのは、もう何度目になるだろう。

さっさと着てきたスーツに袖を通すと、シーツに身を隠しながら、髪を整えるその背中に向かって言った。

「求めてきたのは君だろ?」



キスをしないヤるだけの男。

そう、社内では言われているらしいが。

否定はしない、あながち間違ってはいないからな。

ただ、一つ間違っているとするならば、それは、キスをしないのではなくて、出来ないからだ。



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