勝手な恋

はじめまして、先輩。



恋する気持ちを知っても、何も変わらない毎日。


「な、恋春。最近なんかまた可愛くなった?」


机で話していたら、ふと翠ちゃんが言った。


「そっそんなことないよ〜!翠ちゃんのが100倍美人サン!」



超否定。



だけどね、ちょっと図星。



あの日から、いつもはしてないメイクをちょこっとだけするようになったし、いつもは二つにくくっている髪型も、ちょくちょく変えるようになった。



絶対先輩がふりむいてくれる日なんか来ないし、お話できる機会すらないけど。



恋って偉大だな。



私だって少しかわいくなりたいとか思っちゃう。



いつもと変わらない毎日だけど、



少し輝いて見えちゃうんだよ。




「そんなこたーないよ。な、剛も恋春可愛くなったと思うよな?」



翠ちゃんがわりと遠くにいた剛に話を振る。



「おっ俺にふんじゃねーよ///」


急なふりに戸惑う剛。



そりゃそうだ。



「翠ちゃーん!先生がよんでるよー!」



「あいよー!恋春、ちょっと行ってくるわ」


「いってらっしゃい」


翠ちゃんを送り出して、ちょっとしたら、さっきまであっちにいた剛が来た。



「恋春サン…」


「ん?」


私の机のまえに突っ伏す剛。


どうしたのかな?と思っていると、少しだけ顔をあげていった。



「…恋春、化粧してるでしょ?毎日違う髪型してるでしょ?ね、それ誰のため?」



「…っ////」



ばれてた。誰にもばれてないと思ったのに、剛にばれてた。



なんか、すごく恥ずかしい。



「最近男子が恋春かわいいって噂してる」



ムッとしたように口を尖らせ剛が言う。



「うっそだ〜」



私なんか、誰も気にしてないよ。




「ねぇ、誰のため?」




剛が私の髪の毛を撫でながら、どこか切なそうなに…だけど真剣な目で言う。



「っ////いっ言わせないでよ。恥ずかしいよっ////」


恥ずかしくなって俯く。




「…なんで?羽多野先輩には彼女いるのに」




わかっていてもグサッと私をえぐる言葉。



違う。



私は羽多野先輩に期待してるんじゃない。




初めて知った恋心を大切にしたいだけ。





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