カリス姫の夏
第二駐車場は正面側の左奥に位置している。ぐるりと病院の横を通り抜け、目的地を目指した。
そして駐車場に入ると、正面入口から極力近い場所に陣取った。
お父さんの親心だろうか。
素早く車から降り、リフトで降ろされた高橋さんの車いすのフックをはずす。そこに無駄な動きは一切ない。こんなに素早く行動できるなんて、自分の潜在能力に我ながら驚く。
車内で待機していると約束したお父さんは「気をつけて行きなさい」と声をかけ、父親の存在をアピールした。高橋さんに、ちょっぴりやきもちを焼いているのかもしれない。
本日、最強の味方であり最大の同志、高橋さんは振り向き、私の顔を見た。キャンプに来た小学生のような、興奮を抑えられないと言いたげな少年の顔をのぞかせている。
私達の目の前には、最終ステージのゴールが用意されていた。目の前に見えるゴールテープに、本当に行っていいものかと一瞬、ひよった。リアルで勝ち組になった経験の少ない私は、不安にさえなる。それでも、わずかな勇気をかき集め、私は車いすをめいっぱい押した。
敵キャラに洗脳されていた巨大建造物は、その心の扉(自動ドア)をびよーんとちょっと間の抜けた音を立てながら開け放った。洗脳は解かれ、善良な建造物に戻っているらしい。
私達はその建物に歓迎されながら入り口を通り抜けた。
すぐにスマホで時間を確認すると、残り時間は42秒。完全勝利に間違いはない。
「間に合った……」
とつぶやくと、全身から力が抜けていった。。
ゲームクリアのファンファーレと花火の音が私の脳内で響き渡った。たくさんの仲間達の祝福が届くようだ。
どんなにくやしがってくるかと吉元さんの顔を見たが、敵キャラは倒された事を自覚していないらしい。氷河期の大地みたいな冷え切った顔で「病院なんだから携帯の電源切っときなさいよ」と言い、スタスタと病院の中に入っていった。