【完】適者生存
最小音に設定しておいた古い目覚まし時計が鳴る。


「ん・・・ぁ」


時刻は4時20分。


私は前日に包んでおいた風呂敷を手に持ち、そっと宿舎を抜ける。


神社の門の前に立ち、一礼する。


今までありがとう、そういう気持ちを込めて。


歩道にはまばらに人が歩いている。


私は早足で駅へ向かう。


切符を購入し、鉄道へ乗る。


昔ながらの蒸気機関車。


車内はレトロなアンティーク調。


車内にある席へ座り、少し目を閉じる。


すると、耳元で手拍子のような音が聞こえる。


何かと思い、目を開ける。


音がしたほうを向くものの、誰もいない。


・・・気のせいか。


そう思い、再び目を閉じようとする。


しかし、できなかった。


私の席の通路を挟んだ隣に1年前の4人組が座っていた。


しかも、表情は虚ろ。


・・・須崎、悠里だっけ・・・?


「あははっ、楽しみだねぇ。」


笑い声とともに聞こえる。


私は声のしたほうを向く。


・・・桜ちゃんと桜ちゃんのお母さんが席に座っていた。


刹那、空気が張り詰め、6人が苦しみ始める。


「・・・っ!?」


どういうこと・・・!


この状態は呪人形があると考えてもいい。


じゃあどこに・・・


私は席を見渡す。


呪人形らしきものはどこにもない。


・・・ん?


全員が呪いにかかった・・?


つまり全員を見渡せる場所・・・?


私はとっさに荷台を見た。


・・・ああ、あった。


一番端の荷台に呪人形が置いてあった。


取りに行こうとすると、再び手拍子がなり、意識が遠くなった。
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