手に入れたいのはお前だけ。
王子様の本当の素顔
「千澄」
夕暮れ時の教室。
放たれた窓からは心地よい風が入り込んで
あたしの髪をさらっていく。
そんななかであたしを呼ぶ心地よい声。
机に頬杖をついてグラウンドに
向けていた視線を、教室の入り口に向けた。
いつも見ても見飽きない綺麗な顔が
あたしを見て微笑んだ。
「深高くん」
「待った?」
「ううん。今日も図書館に行ってたの?」
放課後、いつも深高くんは教室にいない。
それは知り合ってから気づいたこと。
それを聞いたとき、深高くんは図書館に
行っているんだと教えてくれた。
「うん」