恋 時々 涙


振り返ると京太先輩が手を振りながら私の方へ歩いてくる。


制服姿とは雰囲気が全く違う。

胸元の開いたTシャツに黒いパーカーを羽織り、太めのジーパン。黒縁眼鏡を外していて、また一段ときれいな顔だと実感する。






「優ちゃん、見てたよー!すごかったね!かっこよかった!」

いつもの優しい笑顔で微笑む。





「なんで見に来てくれたんですか?」

「あぁ。この大会見に行くって友達が言い出したから俺も行くことになってね。ちょうど優ちゃんも見れるかもとか思ってさ!!」


つい最近知り合ったとは思えないほど、普通に話せるのはなぜだろう。

"先輩"っていうと、なんだか距離を感じてしまう存在なのだけど、京太先輩にはそれを全く感じない。



それはやっぱり





「なんか馴れ馴れしいね」


この笑顔だろうか。






「そんなことないですっ!嬉しいです。ありがとうございます」


ペコリと頭を下げた。




「だーかーらっ!!改まらないでって!俺には友達として接してよ」


そう言うと、ポンっと私の頭を撫でた。





「じゃあ今日はここらへんで帰るよ。お疲れ!!またねっ」

「あ、はい!」


笑顔で手を振りながら先輩は帰って行った。



『私、先輩の笑っているところしか見たことないかもしれない
…』




考えてみると、ずっと笑っている。話すときも帰るときも常に笑顔だから。










このときはまだ知らない。





先輩の気持ちなんて…










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