年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 由也くんは泊まっていった。お揃いのパジャマを着て腕枕をして私の愚痴を聞いてくれた。親にも式を見せたかったこと、披露宴で皆に祝ってもらいたかったこと、母親への感謝の手紙を読んでみたかったこと。あと、彩乃に結婚しなかったら不倫して別れた不道徳カップルと同じだと言われて言い返せなかったこと、同期の鎌谷に口もきいてもらえなくなったことも。由也くんは怒るどころかうんうんと頷きながら、私の髪を優しく梳いた。

 朝早く起きてご飯の支度をする。寝不足だったけど辛くなかった。白玉粉を練ってお味噌汁に入れる。甘くない卵焼きを作る。準備が出来たところで由也くんを叩き起こして支度をさせる。お湯を沸かしてほうじ茶を入れる。新婚さんみたいで嬉しかった。でもそれもすぐに落胆に変わる。あと数年後にはこうして由也くんの朝ごはんを作る人がいる、それを想像してため息をついた。


「綾香さん?」
「あ……ううん。何でもない」
「駄目です。ちゃんと話すって約束したでしょう」

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