年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 昼過ぎに目が覚めて、由也くんは出掛けるよと言った。コート手袋マフラー。天気は穏やかでそんなに装備をしなくてもと変に思ったけど私も真似をした。望遠鏡に天体観測の本を車に積み込み、出発する。途中で遅い昼飯を取って着いた先は山の中の1軒屋、ログハウス調のペンションだった。


「今夜はここに泊まります」
「へ? ホテルは? ってかここの予約」
「午前中に済ませました」


 由也くんは車を降りるとズカズカと玄関へ歩いていく。中に入ると顎髭が毛むくじゃらのオジサンに出迎えられた。


「おおーっ、藤池クン、久しぶり!」
「ご無沙汰しています」


 サンタさんが白髪になる前ならきっとこんな黒毛だったろうと思わせるオーナーらしき男性は、ゴツい手で由也くんの肩をバンバンと叩く。学生以来だから4年ぶりになります、お元気ですか、と由也くんはオーナーと話し掛けている。話の内容からして由也くんが学生時代にしょっちゅう宿泊していたペンションだということ、オーナーも天体フリークだというのは理解した。

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