年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 助手席の窓から外を眺める。高速道路に入り、山ばかりの景色も徐々に開けてくる。これから東京に帰るんだ、アパートに帰るんだ、今までと同じ生活が待っている。


「……」


 普通、新婚旅行なら同じところへ帰る。新居に真新しい家具や食器を揃えて新しい生活を始める。毎晩一緒にいて同じ朝を迎える。でも私達にはそれは無い。これまでも恋人で、これからも恋人……。私は突き落とされた地下室から僅かな明かりを見て、それを朝日だと思い込むしかないんだ。

 アパートに着き、荷物を下ろす。


「また来るね」
「うん」
「僕も寂しいけど、それまでは時計で我慢します」
「うん」


 荷物を運び終え、由也くんはぎゅうっと私を抱きしめた。帰したくない。帰したくなくて背中に手を回してシャツを掴む。でも由也くんは甘いキスをすると私からゆっくりと離れて、玄関から出て行った。










< 233 / 600 >

この作品をシェア

pagetop