年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 1週間後の検査も異常は無く私は今まで通りに生活した。仕事もし、買い物もし、ご飯も食べた。鎌谷は私に断りも無く由也くんに告げ口した上に殴ったのを負い目に感じたのか無口だった。でも朝に給湯室へ行けば私の分のコーヒーは出来ていて、そんな鎌谷に私はぼそぼそと報告した。殴られた由也くんは怒ってないこと、これからも由也くんと付き合っていくこと。鎌谷は黙って頷いていた。

 普通の生活をしているけど、心の傷が癒えることは無かった。街や電車の中で小さな子供や赤ちゃんを見ると、音が聞こえなくなった。足もすくんで目も逸らせなくなる。思い出して頭が真っ白になる、私の赤ちゃんはどうしているだろうって。どうしているってどうにもならないのに。

 ひと月ほどして私と由也くんはあの高原に向かった。由也くんと相談して供養することにした。星を見せたかったという私の一言を受けて、星が良く見える場所にしようと決めた。あの教会からほど近いお寺。喪服に身を包み、本堂でお経を読む僧侶の後ろで手を合わせる。私は産婦人科の廊下で見た赤ちゃんと比べたことを思い出して、辛い思いさせてごめんね、寒い思いさせてごめんね、と謝ることしか出来なかった。

< 299 / 600 >

この作品をシェア

pagetop