年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 とある週末、由也くんはうちに来た。


「紅茶専門店に行きまして」


 銀座にあるちょっと有名な専門店に用事があり、ついでに茶葉を買ってきてくれた。私が牛乳好きと知っててミルクティ向きの葉を選んでもらったらしい。湯を沸かそうと立ち上がると、由也くんは、綾香さんは座ってて、とキッチンに行く。なんだかちょっとご機嫌だった。


「何かいいことあったの?」
「ええ。大口の契約が決まって」
「ふうん。おめでと」


 由也くんははにかんでありがとうと言う。そういうところは新人の頃と変わらない。年下って可愛いと素直に思える。私はソファに座って由也くんを見る。洗い物以外で立たないキッチンで由也くんは右往左往する。手鍋で湯を沸かし始めたはいいがティーポットや茶漉しが見つからない。そんなところも可愛い。そのうちに手鍋に触って火傷した。私はキッチンに飛び、由也くんの指を水道水で冷やす。


「由也くん、私がいれるよ」
「大丈夫です。美味しいミルクティのいれ方を教わったから」
「うん。じゃあ隣で見てる」


 そういう気持ちも嬉しい。もう何年も付き合ってるのに新鮮に感じる瞬間。由也くんは手順を忘れたのかポケットから紙を取り出した。

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