年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

「由也くんが、由也くんが行っちゃうっ!」
「長谷川落ち着けっ」
「由也くんっ!」
「長谷川っ」


 肩より下あたりに痛みを感じる。鎌谷は力ずくで喚く私をぎゅうっと抱きしめていた。


「あ……ごめん。私、変な夢を」
「ボンボンか」
「婚約者と消えてく夢。もう大丈夫、ありが……」


 鎌谷は腕を離そうとしなかった。それどころか腕に力を入れ、後ろからぎゅうっと抱きしめ続ける。私の背中にぴたりと体を付けて動かない。真夜中、妹の部屋、布団の上。聞こえるのは目覚まし時計の秒針の音と鎌谷の息遣い。


「カ、カマ」
「もうさ……」


 パジャマ越しに伝わる鎌谷の胸板。ゴツくて広い。
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