春、ふわり。【短】
かじかむ程の冷たい空気が和らぎ始めた頃、冬が始まってからずっと手放せなかった手袋の出番が僅かに減った。


後もう少し、後もう少しで、今よりも格段に暖かくなる。


そう思えば今日も何とか頑張れそうな気になるのは、寒い冬がとても苦手だから…。


雪が積もって嬉しいと思えた子どもの頃とは違って、大人になった今は同じ状況になれば会社に行くのが憂鬱になってしまう。


同僚とそんな話をした先日の大雪の日の事は、まだ記憶に新しい。


滅多に積雪を経験しない場所に住んでいる事もあって、あの朝は電車もバスもタクシーも動かず社員の半数以上が遅刻をして来た。


幸いにも、私は何とか定時までに出社する事が出来たけど…


オフィスに辿り着けなかった社員もいたあの日の事が業務に影響し、1週間経った今もあちこちで仕事が滞っている。


もう年度末間近だという事もあって、上司達はこぞって『早く遅れを取り戻せ』と口を揃え、社内の空気はどこかピリピリとしていた。


それは今日も変わらなくて、いつになったら元の雰囲気に戻るのだろうと考え、そっとため息をつく。


その後でそんな自分を心の中で叱責し、再び書類に目を通した。


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