歪んだ愛しさ故に
 
「それはまあ……いろいろありまして……」
「そうなの?
 ま、言いたくなかったらいいんだけど」


無理に聞き出そうとしないのも、玲子さんのいいところだと思った。


素性を隠していた自分。
どうしても、過去を消したくて……。


過去と同じ過ちを犯したくなくて……。



「じゃあさー。
 どうして急に、素性をさらけ出そうと思ったの?」


ズイと前に乗り出して、あたしの顔をじっと見つめた。


玲子さんは、人を綺麗だとか言っているけど
あたしからしてみたら、玲子さんのほうがよっぽどの美人だ。


そんなふうに前のめりになって聞かれると、嘘がつけなくなる。


「やっぱ上沢?」
「え……」
「図星か」
「いや、べつに……」


肯定なんかしてないのに、あたしの反応を見て納得してしまった玲子さん。


玲子さんと上沢さんはタメで
特別すごい仲がいいというわけではなかったけど、お互いに呼び捨てにするほどだった。
 
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