歪んだ愛しさ故に
17章 言葉
「お客さん、着いたよ」
「ありがとうございます」
あれから、30分ほどタクシーに乗って、着いた汐留駅。
運転手さんにお金を払って、タクシーを降りた。
いったい、こんなところまで来て何やってんだろう……。
来たのはいいけど、拓がどこにいるかなんて分からないのに……。
ここに、葵さんの住む家があるんだろうか……。
それか約束をして、どこかお店に入った?
無我夢中になって追いかけてきたのはいいものの、ここから先を全く何も考えてこなかった。
ひとまず、駅付近を探してみよう。
手がかりがない今、駅しか便りがない。
たとえお店に入ってしまったとしても、
電車を利用したり、タクシーを捕まえに駅まで来ると思うから。
携帯を片手に、辺りを見渡した。
「あ……」
あたしは運がいいのかもしれない。
探し回った最初の付近に……
拓は、いた。