だから私は雨の日が好き。【花の章】





――――知って欲しい。貴方を見つめた、私がいることを――――




一面の向日葵畑。

太陽に向かって真っ直ぐ伸びる強い花。

光の中で黄色と緑がむせ返るほど、溢れている。


その中に立つ、真っ白な服を着た女の人。

後ろ向きに立つショートボブの女性。




そのCMは、とても切なかった。

想っても想っても振り向いてもらえない女の人が。

次の人では素敵な恋が出来ますようにと、祈りを残して向日葵になり、その香水を渡して消えていく。



次に想いが繋がるように、季節が続いていくように。

そんな願いを込めた香水。

『Clytie(クリュティエ)』。



最後の画面、振り向いた女の人はとても柔らかい微笑みをしていて。

その口元だけが映されていた。

画面が暗転して真っ暗になる。

そこに白抜きの文字が映し出される。




――――季節を継ぐのは、『亜の香り』――――




手はまだ繋がれたままで。

絡んだ指の感触がとても鮮明で、いつも熱いはずの彼の手が少しだけ冷たく感じた。


ぎゅっと込められた力に目線を向けると。

あの秋の日と同じ、信じられないくらい優しい顔をしていた。




そして気付いた。

この顔は、私を大切にしている、と。

伝えてくれる顔だと。


気付こうとしなかった自分が。

大切にされていると理解しなかった自分が。




どれだけ自覚がなかったのか、想い知らされるようだった。




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