だから私は雨の日が好き。【花の章】

Conclusion.






――――――――――――――……
―――――――――――――……




「週末、向日葵見に行かない?」




カウンターキッチンで洗い物をしながら、輝が言った。

私はダイニングテーブルの上を片づけながら、その声の主の方へ目線を向けた。


会社から出ると輝から連絡があり、地下鉄の駅で待ち合わせをして彼の自宅へ向かった。

最近ではこうして一緒に帰ることが増えている。

私の家の方が会社からは近いのに、彼は自分の自宅に私を連れて来るのだ。


それは自分のテリトリーに入れるという意味で、彼には大きく意味を持つはずなのに。

彼は何の躊躇もなく私を招き入れた。

そんなことをされると、自分もそれを許したい衝動に駆られ。

平日は彼の家で、週末は私の家で、と。

分担が決まっているかのように家で会うことが多くなった。




あれから八ヶ月が過ぎ。

私達は結局『セフレ以上、恋人未満』というなんとも微妙な立ち位置を守っている。

それでも変わったこともあって。

セフレと呼ぶには深く繋がり過ぎており、恋人と呼ぶにはまだ拙い関係のままなのだ。


日々縮まる距離の中、違和感よりも安心感を感じ始めていることに自分では気付いていたが。

それを輝に告げることは、まだ出来なかった。




「どうしたのよ、急に」


「本物を見せたいと想っただけ。行ってみないか?向日葵畑」


「いいけど」


「じゃあ、空けといてよ。予定」




さりげなく交わされる会話の中に、こうした約束も当たり前になった。

私のスケジュールをさりげなく埋めてくれることを、実はとても嬉しく想っていた。




< 154 / 295 >

この作品をシェア

pagetop