ラブレターを貴方に


「本当はさ、翔太も誘ったんだけどね、今日は予定があるとかで、フラれちゃったんだよ」

今人気の映画までには、まだ時間があり、私達は、近くのマックでランチをとっている。

ポテトをつまみながら、何気なく高橋さんは言った。

「そうなんですか……」

「まぁ、アイツは忙しいからさ」

「忙しい……?」
    ...
「ほら、あっちの方がさ」

「?」

「仕事は出来るのに無愛想だからね、友達出来ないんじゃないかって気になってたんだよ。だけど、美紀ちゃんと話すようになって、アイツ変わってきたから。俺の取り越し苦労だったかなってね」

「変わった……かな?」

「うん、前より“寄り付くなオーラ”が消えた。だから、アイツにとって、美紀ちゃんは特別なんだよ。ま、本人が気付いているかどうかは知らないけどね」

そう言って、高橋さんはアイスコーヒーに口をつけた。

「前に、美紀ちゃんと付き合ってるのか訊いたら、全否定されたよ」


「え……」


そんな事、彼から聞いた事なかった……。

もしかして、始めからこうなる事を知ってて、高橋さんに言わなかったの?


私の為に……。



「何かさ、俺と二人になっちゃって悪いね。アイツといる時の美紀ちゃん、自然体で好きだったんだけど……って、美紀ちゃん?」

「……?」


高橋さんの表情で、わかった。
私、今泣いているんだって。


私の胸には、高橋君がいっぱいで。
今にも気持ちが溢れ出てしまいそうで。


駄目だ……

私には、やっぱり……


高橋翔太が好き。
それを、今頃気付かされるなんて。


「美紀ちゃん?」

「……高橋さん、本当にすみません。私やっぱり行きますね」


私は、驚く高橋さんに頭を下げると、夢中で駆け出していた。

待ち合わせをする筈だった場所。
いる訳がない。そう、わかっていても、行かずにはいられなかった。




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