お姫様と若頭様。【完】






「ぃ…ゃ、……いやぁぁぁぁ!!!」









温かく包まれた私の体。



懐かしい匂い。



優しい手。



柔らかな髪。



大きな体。





「楪…会いた…かっ……た…」


心地の良い少し低い声。






















ヌルッとした温かく真っ赤な……血。






「ょ、ヨル…ヨル……嫌、ヨルぅッ!」



傷口を抑えても抑えても出てくる
血、血、血。





「お前が…いなくなって……
俺のこ…と…嫌いになった…とか…
ずっと…考え……てて…」


「わかった、わかったからヨル、
もう話さないで。


止まらないの…嫌だ…血が……嫌だよ」


「……ゆず…は……」


少ない力を振り絞って
私の手に手を重ねるヨル。


温かい。



温かいのに…苦しい……。






「…ヨル…。うぅっ…ヨル…ごめん。

…裏切ってごめん…戻らなくてごめん。



……ずっとずっと気になってた。

ヨルも皆も元気かなって。
…会いたいなぁって。



もうヨルは私のこと…嫌いになっちゃったかなぁって心配で……」


「嫌いになんか…ならねぇ……から…」


弱々しく笑うヨルに、
より一層涙が溢れた。




「楪が…離れた理由を……知ったんだ。

……でも…お前が安全なら…も…俺らの
迎え…必要ないとか……思って…。




だけど…この間…ここが襲われるの……
知って、いても立って…も…いらんなくて……よかった………」


段々と私の手を握る力も弱くなってる。


「良くないよ、ヨル。


…私は…私はいいの……皆が無事なら
それでよかったの…。



でもヨルが傷ついたら…私が無事の意味
ないじゃん……ねぇ、ヨル。

私ずっと…あなたに謝りたかったの。


……でもね、私お礼も言いたかったの。


好きになってくれてありがとうって、
ずっと…言いたかったの」




「ん…」

ゆっくりと頷くヨル。



「それとね、ヨル…愛してるから…
ずっとずっと、愛してるの。


出会った時から好きで一緒にいるうちに
それは愛に変わった…。


ヨルだから。

ヨルだからだよ!


…だから……だから、
私を1人にしたりしないで……」










ヨルの返事はなかった。



今、この瞬間、あなたに"うん"って
言って欲しかった。


この先も一緒だって証が欲しかった。








「……ごめんな…楪…」



謝罪なんて聞きたくない!!

あなたの頷きが欲しいんだよ。












私の透明な涙も、
ヨルの赤黒い血も、
どちらもとめどなく流れる。


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