彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
祭の舞台裏

※本編『大学祭』の節の郁生サイドの話です。※


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    ★    ★


「ほえー、キャンパスん中って、結構広いでありんすなあ?」


秋晴れの空。一ヶ谷ののんびりした声。


「……なに、そのイミフな花魁(おいらん)言葉───しかも、口開けすぎ。一ヶ谷、バカっぽい」


矢のようにビシッと飛んでくる杏崎の言葉に、


「……杏崎ぃ、バカはないじゃん」


わざとらしく「シクシク」と泣き真似をする一ヶ谷。


「“バカ”とは言ってないし。バカっ“ぽい”って言ったんですけど」


「もー、未桜は言い方キツイのっ」


横から、杏崎の幼なじみという、9組の倉田さんが口を挟み、


「倉たん、優しい! 素晴らしい!!」


「…………。

うーん、確かにバカっぽいね。しょーがないかな?」


「でしょ?」


二人から半分憐れみの眼差しを向けられる一ヶ谷に、もちろん俺からのフォローの言葉はなし。



───はあ、頭痛い。


何でこんなメンツで出かけることになったんだ。



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